2022/09/09
諸行無常 イーノ翁
今回、「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」展の最終日に行ってきました。
ブライアンイーノといえば、いわゆる「ながら音楽=アンビエント・ミュージック」の巨匠ですが、そもそもの初めから、電子機器などを使ったインスタレーションを同時に志向していたようです。
光と音のシンクロをうたうインスタレーションなのですが、彼のインスタレーションを体験するのは初めてでした。
彼自身のアルバムより、どちらかと言うと、彼がプロデュースした、デヴィッド・ボウイ、トーキング・ヘッズ、U2などのアルバムを聴いていました。アンビエントは当時苦手でした。
展覧会を体験するのに最低2時間は必要のことでした。なるほど、ゆっくりと変化していく音・光・映像そして空間自体を体験するのに、焦りは禁物でしょう。来場者にある種の我慢を強いるということです。そういうこともあり、最終日と考えても結構な人が来場していたのには驚きました。若い人も多かったです。
絶えず生成され変化していく音と光・映像。
そこに無いかのように存在している感覚。
環境と同化するような感覚…
総務省の調査によれば、平均的な日本人1日の可処分時間は2.6時間だそうです。ITサービスは「ユーザーの可処分時間を奪い合っている」と言われています。TikTokに追従し、各動画プラットフォームは動画の「短尺化」を志向しています。
YouTubeも「YouTubeショート」をリリースしました。そんな中、PV至上主義による、アルゴリズムへの追従などで、コンテンツが画一化していくことへの懸念から、新しいメディアが誕生しています。
東浩紀が立ち上げた動画プラットフォーム「シラス」は平均2.8時間尺の番組を配信し、ローンチから1年半で3万人のユーザーを集めています。動画とテキストの違いはあれ、宇野常寛の提唱する「遅いインターネット」も同じような文脈での新メディア立ち上げでしょう。
PV至上主義のアルゴリズムが、異なる意見を持つ人々の断絶を生んでいる現在、社会がITの進化にどう対応していくかは、これからの課題でしょう。
…イーノのジェネラティブ・アートに身を据えて思索を巡らせていると、いつのまにか始まりも終わりもない時間・空間にはまり込んでいる自分がいました。仕事ではアルゴリズムに最適化することが重要だったりするのですが、私自身はそんな単純な人間ではないのです(笑)。
ちなみに、「Windows 95」の起動音はイーノの作曲であり、「Windows Vista」はロバート・フリップ。
坂本龍一氏は、Internet Explorer 4.0のテーマ音の作曲依頼を受けたが不採用でした。